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「著作権は当社に帰属」は一方的な条文だ、と気づいた時にはもう遅かった話

  

こんにちは。フリーランスひかるです。

「著作権はクライアントに帰属する」という契約書の一文、あなたは読んだことがありますか?

フリーカメラマンや動画クリエイターとして仕事をしていると、ほぼ必ずと言っていいほど遭遇する条文です。最初のうちは「まあ、こういうものか」とサインしてしまう。私もそうでした。

でも後から気づいたんです。その一文が、思っていたより自分の権利を広い範囲で手放す行為だったことに。

「知らなかった」では済まされない話ですが、裏を返せば「今日知れば、明日から防げる」話でもあります。

この記事を読むとわかること

  • 「著作権は当社に帰属」という条文が、実際にどこまでの権利を奪うのか
  • カメラマン・動画クリエイター特有の「肖像権×著作権×SNS二次利用」の地雷ポイント
  • 納品後にクライアントが勝手にSNSで使い回していたとき、何ができて何ができないか

ある日の納品後、少し嫌な予感がした

撮影の仕事が終わり、編集済みの動画データをクライアントに納品した。打ち合わせ通りのコーポレートムービーで、出来にも納得していた。

数週間後、ふとそのクライアントのInstagramを開いたとき、目に飛び込んできたのは見慣れた映像だった。

納品した動画の一部が、細かくカットされて何本もの投稿に分割されていた。しかも、出演者の顔がはっきり映っているカットで。撮影時に「広告には使わない」と口頭で言っていたはずのカットも、そこにはあった。

連絡すべきか、しばらく迷った。契約書を引っ張り出して読み返すと、「納品物の著作権は当社に帰属する」とある。

「これって、もう何も言えないってこと…?」

怒りより先に、じわじわとした無力感が来た。何十時間もかけて撮って、編集した映像が、自分の知らないところで切り刻まれて使われている。でも、サインしたのは自分だ。

その後、クライアントに確認のメッセージを送ったが、「契約書通りです」の一言で終わった。


「著作権はクライアントに帰属」は、どこまでの権利を手放すことになるのか

一言で言うと、「全部渡す」のと「使う許可だけ渡す」は、まったく別物です

多くのフリーカメラマンが見落とすのは、「著作権の譲渡」と「利用許諾」の違いです。

「著作権は当社に帰属する」という条文は、著作権そのものを丸ごとクライアントに移す意味を持ちます。一方、「当社はこの写真・動画を〇〇目的で使用できる」という書き方は、利用を許可しているだけで、著作権はあなたのもとに残ります。

この違いは、後で詳しく解説しますが、まず覚えておいてほしいのはこの1点です。

「著作権を渡した=使い道をクライアントが自由に決められるようになった」ということ。

なぜそう言い切れるのか。私自身が「全部渡してしまった」経験があるからです。


著作権の「譲渡」と「利用許諾」、この違いを知らないと起きること

そもそも著作権とは何か

著作権とは、創作物を作った瞬間に自動的に発生する権利です。写真を1枚撮れば、その瞬間から撮影者に著作権が生まれます。契約書を書かなくても、登録しなくても。

著作権には大きく2種類あります。

種類内容譲渡できるか
著作財産権複製・公衆送信・翻案など、お金に関わる権利できる
著作者人格権氏名表示権・同一性保持権など、人格に関わる権利できない

フリーカメラマンが契約書で問題になるのは、主に「著作財産権」の部分です。

「著作権は当社に帰属」は、財産権を全部渡す意味になる

「著作権は当社に帰属する」という一文は、著作財産権のすべてをクライアントに移転させる条文として解釈されます。

これが成立すると、クライアントは以下のことが自由にできます。

  • 納品した動画・写真をSNSでいつでも何度でも投稿できる
  • 目的や用途を変えて使える(「コーポレートムービー用」で撮ったものを広告に流すなど)
  • 第三者に売ったり、他のクリエイターに加工させたりできる
  • あなたの名前を外して使える

一方、あなたには「もうこの作品を自分のポートフォリオに使う権利もない」という状態になり得ます。

ただし、著作権法27条・28条には注意が必要

少し専門的な話ですが、実は重要なポイントがあります。

著作権法の規定では、「翻案権(27条)」と「二次的著作物の利用に関する権利(28条)」は、契約書に「これらも含む」と明記しないと譲渡されないことになっています。

つまり、「著作権をすべて譲渡する」と書かれていても、27条・28条については別途記載がないと、あなたに残る可能性があります。

正直、この部分を知っているクライアント担当者はほとんどいません。でもトラブルになったとき、ここが争点になることがある。


「著作権は当社に帰属」にサインしたまま納品した写真を、SNSで使い回された話

「そういうものだと思ってた」が一番怖い

当時、私は「納品物の著作権はクライアントに帰属する」という条文を読んで、正直少し引っかかりを感じていた。「これ、制作者を無視した一方的な条文じゃないのか」と。

でも、当時はそれが「業界の慣習」なのだと思い込んでいた。周りのカメラマンに聞いても、「まあ、どこもそんなもんだよ」と言われた。

それでサインした。

数ヶ月後、そのクライアントのSNSを見ると、自分が撮った写真が複数の投稿に使われていた。出演者が誰なのかはっきりわかる写真が、撮影時に想定していなかった文脈で使われていた。

連絡するか迷った。でも「著作権はクライアントに帰属する」という契約にサインしたのは自分。

「言える立場ではないのかもしれない」と思った瞬間の、なんとも言えない虚しさ。あれは今も覚えている。

本当の問題は「知識不足」ではなく「構造の不透明さ」にある

後から分かったのは、このケースには「著作権の問題」と「肖像権の問題」が混在していたということです。

著作権をクライアントに渡したとしても、「被写体の肖像権」はまったく別の話です。クライアントが著作権を持っていても、出演者本人の同意なく特定の用途に使えるわけではありません。

つまり、あのとき私が「言える立場ではない」と思ったのは、半分は正しくて、半分は間違いだった。

著作財産権については確かにクライアントのもの。でも「出演者の肖像権をきちんと処理していたか」「撮影時に合意した用途の範囲内か」については、別途確認できる余地があった。

これを知らなかったのは、スキルの問題でも人格の問題でもない。ただの「構造を知らなかった」というだけの話です。


フリーカメラマンが踏む「肖像権×SNS二次利用」の地雷3つ

地雷①:被写体の肖像権処理をクライアント任せにしていた

「著作権はクライアントに帰属」という条文にサインすると、「権利まわりはすべてクライアントが責任を持つ」と思いがちです。

でも、肖像権はそうはなりません。

肖像権とは、本人の同意なく顔・姿を撮影・公表されない権利です。法律には明文化されていませんが、判例で認められた権利で、憲法13条(幸福追求権)が根拠とされます。

撮影時にモデルリリース(肖像権使用同意書)を取得していなければ、著作権がどちらにあろうとSNSへの無断掲載は肖像権侵害になり得ます。

問題になりやすいのは以下のようなケースです。

  • 社員インタビュー動画を撮影→退職後もSNSで使い続けている
  • 商品撮影で映り込んだ人物が、別の投稿で使われた
  • ポートレート撮影で「SNSには使わない」と口頭で合意していたのに投稿された

「著作権をクライアントに渡した」ことと「肖像権を処理した」ことは、まったく別問題です。

地雷②:動画の著作権は写真と扱いが異なる

写真と動画では、著作権法上の分類が違います。

動画(映像)は著作権法上「映画の著作物」として扱われます。これには通常の動画だけでなく、企業PV、インタビュー映像、YouTube用のショート動画なども含まれます。

重要な違いがここにあります。

著作物の種類著作権が原始的に帰属する主体
写真撮影したカメラマン
映画・動画「制作に発意と責任を持つ者」(製作者)

動画の場合、制作を「発意して責任を持つ」立場にあるのがクライアントと判断されると、著作権がクライアントに帰属するケースがあります。

つまり「動画はそもそも私の著作権じゃないかもしれない」という状況が起こり得る。契約書の条文以前に、法的な構造として。

これを知らずに「動画の著作権は撮影した自分のもの」と思い込むのは危険です。

地雷③:「納品後の使い道」に合意していない

最もよくあるトラブルが、これです。

撮影時に「ウェブサイト用」と聞いていたのに、気づいたらテレビCMや交通広告に使われていた。「社内研修用」で撮ったインタビューが、クライアントのSNSで拡散していた。

著作権を渡している場合、これを止める手段は限られます。でも著作権を渡していない(利用許諾のみ)の場合、「合意した用途の範囲外」として差し止めを求められる可能性があります。

この違いを生むのが、契約書の「利用範囲」の記載です。


今日からできる3つのこと:カメラマン・動画クリエイターの権利を守る契約のつくり方

ステップ1:「著作権は当社に帰属」を「利用許諾」に書き換えてもらう交渉をする

まず試みてほしいのは、条文の変更交渉です。

「著作権をすべて譲渡する」ではなく「〇〇目的での利用を許諾する」という書き方に変えるだけで、あなたの権利が大幅に守られます。

交渉に使える言い回しの例を挙げます。

「著作権の全部譲渡ではなく、利用範囲を限定した上で著作権はこちらに留保する形にできますか?
著作権法の観点から、この条文では翻案権(27条)・二次的著作物の権利(28条)が曖昧になりますので、
双方にとって明確にした方が安全です」

「法的に双方にとって安全」という切り口で話すと、クライアントも受け入れやすくなります。

ステップ2:利用範囲・媒体・期間を契約書に明記する

著作権の帰属よりも、実務上で大きな効果を持つのが「利用範囲の明記」です。

以下の項目を必ず盛り込むことをすすめます。

項目記載例
利用媒体自社ウェブサイト・Instagram・YouTube(SNS広告への転用は別途合意)
利用期間納品日から2年間
利用目的コーポレートブランディング目的のみ
第三者への転用禁止
出演者の肖像権モデルリリースの取得はクライアント責任とする

文化庁が公開している撮影委託契約書の雛形も参考になります。検索窓に「文化庁 写真撮影 契約書 ひな形」と入力すると確認できます。

ステップ3:口頭合意をメール・チャットで「テキスト化」する習慣をつける

打ち合わせで「SNSには使わない」「広告転用はしない」と言われたら、その日のうちにメールかチャットで確認を取ります。

「本日の打ち合わせの確認です。
納品物の使用範囲は自社ウェブサイトのみで、SNSへの転用・広告利用はしないという認識で合っていますでしょうか?
確認いただけますと助かります」

これだけで、後日「言った・言わない」のトラブルを大幅に減らせます。「証拠を作る」のではなく「認識を合わせる」という姿勢で送るのがポイントです。


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著作権に関するよくある疑問 

(個人事業経営士CFQ 監修)

Q1. 契約書なしで撮影した場合、著作権はどうなりますか?

A:契約書がない場合、写真の著作権は原則として撮影したカメラマンに帰属します。外部委託(業務委託・フリーランス)として仕事を受けた場合、雇用関係がない限り「職務著作」にはならないため、著作権は制作者であるカメラマンのものです。ただし、契約書がないと利用範囲や条件が不明確になり、後からトラブルになりやすい状態です。「著作権はこちらにある」と主張できても、相手が「使用を許可してもらった」と言い張れば水掛け論になります。契約書がないまま仕事を進めるのは、権利があっても行使しにくい状態に自分を置くことになります。

Q2. 納品後にクライアントが無断でSNSに投稿していた場合、削除を求めることはできますか?

A:著作権を完全に譲渡している場合、削除請求は原則として困難です。ただし、「肖像権の処理が不十分だった」「合意した利用範囲を超えている」「著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権)が侵害されている」といったケースでは、それぞれの根拠で対応できる余地があります。まずは「撮影時の合意内容と現在の使用状況が一致しているか」を確認することが先決です。証拠はスクリーンショットで保存し、早めに動くことが重要です(SNSの投稿は削除されると証拠が消えます)。


このように、正しい知識があるだけでトラブルは避けられます!


まとめ|「著作権は当社に帰属」にサインする前に確認すべきことを知っていれば、防げた 

フリーカメラマンや動画クリエイターとして仕事をしていると、「著作権は当社に帰属する」という契約条文はほぼ必ず遭遇します。

「断ったら仕事が来なくなる」「みんなそうしているから」という感覚でサインしてしまいやすい。その気持ちは、本当によくわかります。

でも、著作権の譲渡と利用許諾の違い、肖像権はまったく別問題であること、動画は写真と著作権の帰属ルールが異なること。この3点を知っているだけで、取れる行動の選択肢がぐっと広がります。

まだ次の仕事の契約書が来ていないなら、今日が準備するタイミングです。

この記事が、あなたの「次の仕事」を守る一助になれば嬉しいです。迷ったときは、またここに戻ってきてください。

 

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この記事の監修者

フリーランスひかる
大手IT企業に勤務後独立。フリーランス歴15年超。
報酬未払い、契約トラブル、ブラッククライアント案件…いろんな修羅場を経験してきました。
「あの時知ってさえいれば…」という後悔をバネに、フリーランスの人が同じ失敗をしないよう、自分の身を守る知識と、今日からできる対処法をお伝えしていきます。
フリーランス実務資格「個人事業経営士CFQ」監修