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「著作権は乙に帰属する」で油断してたフリーランスが、自分で契約書を出すようになった理由

  

こんにちは。フリーランスひかるです。

「著作権は乙に帰属する」という一文、あなたの契約書にも入っていますか?

フリーランスとして著作物を納品する仕事をしているなら、この一文を見て「よし、ちゃんと書いてある」と安心したことが一度はあるはず。私もそうでした。でも正直に言うと、この一文だけでは全然足りなかった。

それに気づいたのは、トラブルが起きた後。

もしあなたが今、契約書の著作権条項に漠然とした不安を感じているなら、この記事はきっとヒントになります。「知らなかった」を「知っている」に変えるだけで、同じミスは確実に防げます。

この記事を読むとわかること

  • 「著作権は乙に帰属する」だけでは防げないトラブルの具体的な中身
  • 帰属・利用許諾・改変禁止、それぞれの条項に何を書けばいいか
  • フリーランスが「自分から契約書を送る」ことがなぜ最大の防御になるか

あの日、クライアントのサイトでグッズを見つけた

納品から3ヶ月が経ったころだった。

SNSでたまたまクライアントのアカウントを見ていたら、ショップのリンクが目に入った。クリックしてみると、自分がデザインしたロゴがTシャツに印刷されて販売されていた。

価格は2,800円。在庫は「残りわずか」。

最初は「あれ?」という感じだった。でも数秒後に「待って、これ聞いてない」という感覚が来た。グッズ化の話は、一度も出ていなかった。

「著作権は乙に帰属する」と書いてあった。だからてっきり、使っていいのは契約したWebサイトへの掲載だけだと思っていた。

メールを見返しても、グッズ制作を許可した記録はどこにもない。でも、当時の契約書を引っ張り出してみたら、確かに何も書いていなかった。「帰属する」と書いてあるだけで、「何に使っていいか」「何に使ってはいけないか」は、一行も。

言えなかった。「帰属」の意味を理解していなかった自分が、何かを主張できる立場じゃないと感じた。悔しいというより、ただ、情けなかった。


著作権トラブルを防ぐ契約書の書き方:「乙に帰属する」だけでは足りない理由

結論から言います。

「著作権は乙に帰属する」という一文は、権利の「持ち主」を決めているだけです。「何に使っていいか」「改変はOKか」「二次利用はどこまで許すか」は、一切決まっていません。

だから、グッズ化・SNS転用・別媒体への転載・AI学習への利用など、予期しない使われ方をされても、「帰属する」という一文だけでは止められないケースがある。

詳しい理由は後で説明しますが、まず「なぜ私がこんなに痛感しているか」を先に話させてください。


「帰属するだけ」で起きる3つのすれ違い

著作権に関するトラブルは、悪意より「認識のズレ」から起きることが多いです。

ズレ1:帰属≠利用制限

「著作権が乙(フリーランス)に帰属する」は、「あなたのものですよ」という話。でも「どこまで使っていいか」は別の問題です。

契約書に利用範囲が書かれていないと、クライアント側は「納品物だから普通に使えるでしょ」と解釈します。サイト掲載なのかグッズ制作なのか、そのすれ違いが後のトラブルに直結します。

ズレ2:著作権法27条・28条は「特掲」しないと譲渡されない

少し専門的な話ですが、ここが重要です。

著作権法には「翻案権(27条)」と「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(28条)」という規定があります。

  • 27条:著作物を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化などに使える権利
  • 28条:二次的著作物(元の著作物をもとに新たに作ったもの)を利用できる権利

実はこれらは、「著作権を譲渡する」と書いただけでは相手に渡りません。「著作権法27条及び28条の権利を含む」と「特掲」しないかぎり、フリーランス側に留保されたものと推定されるのです(著作権法61条2項)。

つまり「著作権は甲に譲渡する」とだけ書いた契約書では、クライアントはデザインをアレンジしてグッズを作ることすら、法的にグレーになりえます。これがすれ違いを生む根本原因のひとつです。

ズレ3:「著作者人格権」は譲渡できない

著作権とは別に、「著作者人格権」という権利があります。これは「自分の作品を勝手に改変するな」「自分の名前を外すな」という権利で、法律上、どんな契約を結んでも他人に譲渡できません。

ただし、「著作者人格権を行使しない」という「不行使特約」を盛り込むことはできます。この一文がないと、クライアントが細かな修正をするたびに理論上は許可が必要になる、という状況になりえます。

権利の種類内容注意点
著作権(財産権)複製・配布・展示・翻案など譲渡・許諾が可能。27条・28条は特掲が必要
著作者人格権氏名表示・同一性保持など譲渡不可。不行使特約で対応する
二次的著作物の権利翻訳・編曲・グッズ化など28条を特掲しないと元の著作者に留保される

「乙に帰属」の一文に安心してたフリーランスが気づいたこと

グッズ販売のことをメールで伝えると、クライアントは「え、著作権は渡してもらってますよね?」と返してきた。

違う。渡してない。帰属は乙(自分)のままだ。

でもクライアントは悪意があったわけじゃなかった。「Webサイトに使ったんだから、デザインはうちのもの」という認識が最初からあったんだと思う。

この経験で痛感したのは、「契約書はクライアントが作るもの」という思い込みが、一番の問題だということ。

クライアントが作る契約書は、クライアントに有利な内容になりやすい。それは当然です。でもフリーランス側が何も言わずにサインすれば、その内容で合意したことになる。

そこから変えようと思った。「こちらから契約書を送る」という流れを、自分で作ることに。

最初はかなり抵抗があった。「そんなこと言ったら仕事もらえなくなるかも」と思ったし、「まずドラフトが送られてくるのが普通でしょ」という感覚もあった。でも実際にやってみると、むしろ「ちゃんとしてる人だ」と評価されることの方が多かった。著作権に詳しい個人事業主は少ないから、先手を打てるだけでそれが差別化になる。


著作権トラブルを防ぐ契約書の「3つの条項」書き方と実例

ここからが実務の核心です。フリーランスが自分で契約書を用意するなら、最低限この3つを入れてください。

① 帰属条項:誰のものか・いつ移転するか

著作権をクライアントに譲渡する場合の例文

第〇条(著作権の帰属)
1. 乙が本業務において制作した成果物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む)は、乙から甲への報酬の支払い完了をもって、乙から甲に移転する。
2. 乙は、甲に対し、成果物に関する著作者人格権を行使しないものとする。

ポイントは2つ。

「27条及び28条の権利を含む」と明記すること。そして「報酬の支払い完了をもって」と移転のタイミングを決めること。「納品時」にすると、未払いのまま著作権だけ渡す、という事態になりえます。

著作権を手元に残して利用許諾だけ与える場合

フリーランスが著作権を手放したくないなら、「許諾」という方法があります。

第〇条(著作権の帰属と利用許諾)
1. 成果物に関する著作権は乙に帰属する。
2. 甲は、本契約の目的の範囲内(甲の自社Webサイト掲載のみ)で成果物を利用できる。
3. 前項の利用範囲を超えた利用(グッズ制作・SNS広告・第三者への転用等)については、別途書面による乙の事前承諾を要する。

② 利用許諾の範囲:「目的」と「媒体」を明示する

「帰属」を書いても、利用範囲が曖昧だとトラブルになります。

項目曖昧な書き方(NG)明確な書き方(OK)
利用媒体「通常の使用に限る」「甲の公式Webサイト(URL: 〇〇)への掲載に限る」
期間記載なし「本契約終了後2年間」
地域記載なし「日本国内のみ」
改変記載なし「色調・サイズの変更は可。デザインの追加・削除は不可」
二次利用記載なし「グッズ制作・SNS広告への転用は別途協議」

特にデザイナー・イラストレーター・ライターは、この「利用媒体」の定義が命綱になります。

③ 改変・二次利用禁止条項:「何をしてはいけないか」を書く

改変と二次利用を制限したい場合の一文例です。

第〇条(改変・二次利用の禁止)
1. 甲は、乙の書面による事前承諾なく、成果物のデザイン・内容を改変してはならない。
2. 成果物を用いたグッズの制作・販売、第三者への転用・再配布、AI学習データへの利用は禁止する。
3. 前二項に違反した場合、甲は乙に対し、別途協議の上、使用料相当額の損害賠償を支払うものとする。

「禁止する」と書くだけでなく、「違反した場合はどうなるか」まで書いておくと抑止力が高まります。


フリーランスが「自分から契約書を送る」ことを始めたらどうなるか

著作権がらみの仕事をしているなら、ぜひこの流れを試してほしいです。

ステップ1:自分用のひな型を1つ作る

契約書を一から作るのは大変に感じるかもしれませんが、ひな型が1つあれば、案件ごとにURLや業務内容を書き換えるだけで使い回せます。著作権条項・利用許諾の範囲・改変禁止・支払い条件の4つを入れれば、最低限のものになります。

無料で参考にできる素材として、文化庁の「著作権契約書作成支援システム」があります。(https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-template/

ステップ2:クライアントに「先に送る」流れを作る

最初の打ち合わせの後、見積もりと一緒に契約書のドラフトを送ります。「いつもこういう形式でお送りしています」と一言添えるだけで、先方もスムーズに受け取ってくれることがほとんどです。

「条件が合わないなら変えましょう」という姿勢を見せることで、対等な交渉ができます。むしろクライアントから「きちんとした人だ」と思われることの方が多い。

ステップ3:2024年11月施行のフリーランス新法を活用する

2024年11月に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、発注者が業務委託をする際、取引条件を書面または電磁的方法で明示することが義務化されました。

これは逆に言えば、「契約書でしっかり条件を確認してください」という社会的な後押しが法律レベルでついた、ということです。「契約書をちゃんと交わしたい」というフリーランス側の要望が通りやすい環境になっています。

まとめると:ひな型を作って→先に送って→法律を味方につける。これだけで、著作権トラブルの8割は事前に防げます。


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著作権と契約に関するよくある疑問 

(個人事業経営士CFQ 監修)

Q1. 著作権を譲渡したら、ポートフォリオにも使えなくなるの?

A:著作権を譲渡した場合、原則として使用には権利者(クライアント)の許可が必要です。ただし、実務ではポートフォリオ掲載を「実績の紹介目的に限り許可する」という一文を契約書に入れることで対処できます。譲渡を求められた場合は、「ポートフォリオ掲載の許可」をセットで交渉することをおすすめします。

Q2. クライアントが送ってきた契約書に著作権条項がなかった。後から追加できる?

A:できます。既存の契約書に追加する場合は「覚書(おぼえがき)」または新たに「著作権に関する合意書」を締結する方法が一般的です。「先日の契約書に著作権の取り扱いについて明記しておきたい」と申し出れば、誠実なクライアントであれば拒否することはほとんどありません。フリーランス新法の施行により、取引条件の明確化はクライアント側にも義務化されているため、むしろ求めやすい状況です。


このように、正しい知識があるだけでトラブルは避けられます!


まとめ|著作権トラブルを防ぐ契約書の書き方 

著作権トラブルを防ぐ契約書の書き方は、決して難しくありません。

「乙に帰属する」という一文の意味を正確に理解して、利用範囲・改変の可否・二次利用の条件を具体的に書く。それだけのことです。

でも、それを「やっていなかった」フリーランスは、私も含めてたくさんいます。悪意があったわけじゃない。ただ、知らなかっただけ。

契約書のことを考えるのが面倒で、後回しにしたくなる気持ちはよくわかります。クライアントとの関係を壊したくなくて、言い出せないこともある。

でも、自分から契約書を送ること。それが一番シンプルで、一番確実な防御線だと、今は思っています。

 

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この記事の監修者

フリーランスひかる
大手IT企業に勤務後独立。フリーランス歴15年超。
報酬未払い、契約トラブル、ブラッククライアント案件…いろんな修羅場を経験してきました。
「あの時知ってさえいれば…」という後悔をバネに、フリーランスの人が同じ失敗をしないよう、自分の身を守る知識と、今日からできる対処法をお伝えしていきます。
フリーランス実務資格「個人事業経営士CFQ」監修