
こんにちは。フリーランスひかるです。
先日、フリーランス仲間から相談された話が忘れられません。「ひかるさん、私が作ったロゴが勝手に他の会社で使われてるんです…でも契約書に『著作権譲渡』って書いてあって、もう何もできないみたいで」
その方は、半年前に制作したロゴが、発注元のクライアントから全く別の会社に転売されていることを偶然発見したそうです。制作費は30万円だったのに、転売価格は150万円。悔しさと無力感で夜も眠れなかったと話していました。
実は私自身も、フリーランス3年目の頃に似たような経験をしました。著作権についてよく理解せずに契約を結んだ結果、自分の作品をポートフォリオに載せることすらできない状況に陥ったのです。あの時の悔しさは今でも忘れません。
でも、正しい知識を身につけることで、こうしたトラブルは防げるんです。それどころか、著作権を武器にして単価アップや長期的な収益につなげることもできます。
✅ この記事はこんな方におすすめ
- 著作権について曖昧な理解のままクライアントと契約している方
- 作品をポートフォリオに掲載できず困っている方
- 権利譲渡について適切な価格設定ができていない方
- クライアントとの契約書に不安を感じている方
- 著作権を活用して単価アップを目指したい方
私が30万円の損失から学んだ著作権の基本ルール
フリーランス3年目の春、私は大手メーカーからWebサイトのデザイン制作を受注しました。制作費50万円の案件で、当時の私には大きな仕事でした。
契約書には「著作権は発注者に帰属する」という文言があったのですが、正直なところ深く考えずにサインしてしまいました。「とにかく仕事がもらえれば」という気持ちが先立っていたんです。
制作は順調に進み、クライアントにも大変喜んでもらえました。
ところが後日、そのデザインが同じ会社の別部署で無断使用されているのを発見。さらには、関連会社の複数のサイトでも同じデザインが使い回されていました。
「これって追加料金をいただけませんか?」と相談したところ、「著作権は弊社にあるので、どのように使用するかは弊社の自由です」と言われてしまったのです。
その時、初めて著作権譲渡の重みを理解しました。
私が丹精込めて作ったデザインは、もう私のものではなくなっていたのです。ポートフォリオに掲載することすらできませんでした。
この経験から学んだのは、フリーランスにとって著作権は「作品を守る盾」であり「収益を生む剣」でもあるということです。
適切に扱えば、単発の仕事を継続収入に変えることも可能なんです。
権利譲渡契約で絶対に確認すべき3つのポイント
あの痛い経験以降、私は契約書の著作権に関する部分を特に注意深くチェックするようになりました。
特に重要なのは以下の3つのポイントです。
1. 譲渡する権利の範囲を明確にする
「著作権を譲渡する」という文言だけでは曖昧すぎます。具体的に「複製権」「翻案権」「公衆送信権」など、どの権利を譲渡するのかを明記してもらいましょう。
私は現在、基本的には「使用許諾」の形で契約し、著作権自体は保持するようにしています。これにより、ポートフォリオへの掲載権も確保できますし、類似案件への展開も可能になります。
2. 使用目的と期間を限定する
権利を譲渡する場合でも、使用目的を「○○商品のパッケージデザインに限る」「Webサイトでの使用に限る」といった形で限定することが重要です。
また、使用期間も「3年間」「商品販売期間中」など、明確に定めることで、期間終了後の権利関係を整理できます。
3. 著作者人格権の扱いを確認する
著作権とは別に「著作者人格権」という権利があります。
これは譲渡できない権利で、作品を勝手に改変されない「同一性保持権」などが含まれます。
契約書に「著作者人格権を行使しない」という条項がある場合は要注意。
作品が意図しない形で改変される可能性があります。
実例から学ぶ:著作権トラブル事例と対策
事例1:イラストレーターAさんのケース
キャラクターデザインを手がけたイラストレーターのAさん。
契約書で著作権を譲渡したため、そのキャラクターが大ヒットしても追加収入は得られませんでした。
本来なら数百万円の価値があったキャラクターを、制作費20万円で手放してしまったのです。
対策:ライセンス契約の活用
著作権は保持し、使用許諾という形で契約すれば、ヒット時のロイヤリティ収入も期待できます。私も最近は「基本制作費+成功報酬型ライセンス料」という契約形態を提案するようになりました。
事例2:WebデザイナーBさんのケース
制作したWebサイトのデザインが、クライアントの判断で大幅に改変されてしまったBさん。
著作者人格権の放棄に同意していたため、抗議することもできませんでした。
対策:改変に関する事前協議条項
「デザインの改変については事前に協議する」という条項を入れることで、作品の品質を守ることができます。
実際に、2023年には大手広告代理店とフリーランスデザイナー間で、無断改変を巡る訴訟も発生しています
(参考:日本経済新聞「フリーランス保護、著作権巡り法整備急ぐ」)。
こうした事例からも、契約時の取り決めの重要性が分かります。
ポートフォリオ掲載権を確保する契約テクニック
フリーランスにとって、ポートフォリオは次の仕事を獲得するための重要な営業ツールです。しかし、著作権を完全譲渡してしまうと、作品をポートフォリオに掲載できなくなる場合があります。
私が実践している契約テクニックをご紹介します。
契約書に明記すべき条項
「乙(フリーランス)は、本制作物を自身のポートフォリオサイトおよび営業資料において掲載・使用することができるものとする」
この一文を入れるだけで、権利関係がクリアになります。クライアントにとってもメリットがあることを説明するのがポイントです。
クライアントへの説明方法 「ポートフォリオ掲載により、私の実績として紹介させていただくことで、御社の品質へのこだわりも間接的にPRされます」
実際に、私の過去のクライアントからは「ひかるさんのポートフォリオを見て問い合わせました」という新規顧客が数件ありました。ポートフォリオ掲載は、クライアントにとっても宣伝効果があるのです。
掲載期間の提案 永続的な掲載権を認めてもらえない場合は、「プロジェクト終了後3年間」など期間を区切って提案してみてください。多くのクライアントが納得してくれます。
また、フリーランス向けの契約書作成支援サービス「フリーランス協会」の契約書メーカーでは、契約書を簡単に作成できるツールが提供されています。参考にしてみてください。
著作権を武器にした単価アップ戦略
正しい著作権の知識を持つことで、単価アップにつなげることも可能です。私が実践している戦略をお教えします。
権利別価格設定の提案
- 基本制作費(使用許諾のみ):50万円
- 著作権完全譲渡の場合:80万円(+30万円)
権利の価値を明確に数字で示すことで、クライアントも納得しやすくなります。
長期契約での権利活用 著作権を保持することで、同一クライアントとの長期関係を築きやすくなります。
「来年の新商品でも同じテイストのデザインをお願いします」という継続案件につながることも多いのです。
ライセンス収入の創出
成功した作品については、追加的なライセンス収入を得ることも可能です。
私の場合、あるロゴデザインで年間10万円のライセンス収入を3年間継続して得られた経験があります。
初期制作費は30万円でしたが、結果的に総収入は60万円になりました。権利を適切に管理することで、単発の仕事が継続収入源に変わったのです。
よくある疑問と誤解(Q&A)
Q1. フリーランスが著作権を主張すると、クライアントに嫌がられませんか?
A:👉適切な説明をすれば、多くのクライアントは理解してくれます。重要なのは、権利の価値を具体的に説明し、クライアントにとってのメリットも伝えることです。「品質管理の観点からも、作者が責任を持って権利管理します」といった表現が効果的です。
Q2. 既に著作権を譲渡してしまった過去の作品は、どうしようもないのでしょうか?
A:👉完全譲渡している場合、基本的には権利を取り戻すのは困難です。ただし、ポートフォリオ掲載など特定の用途について、クライアントと再交渉することは可能な場合もあります。誠実にお願いしてみましょう。
Q3. フリーランスでも著作権登録は必要ですか?
A:👉日本では創作と同時に著作権が発生するため、登録は必須ではありません。ただし、重要な作品については「創作日時の証明」として、制作過程を記録しておくことをお勧めします。
Q4. 著作権契約でフリーランスが注意すべき落とし穴はありますか?
A:👉「著作者人格権を行使しない」という条項には特に注意が必要です。これに同意すると、作品を自由に改変されても文句が言えなくなります。また、「類似制作の禁止」条項も、今後の営業活動を制限する可能性があります。
Q5. 海外クライアントとのフリーランス契約では、著作権はどう扱われますか?
A:👉国によって著作権法が異なるため、準拠法を明確にすることが重要です。可能な限り日本法を準拠法とし、不明な点は専門家に相談することをお勧めします。特にアメリカの「Work for Hire」条項には要注意です。
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【まとめ】自分の作品は大事にしよう!
著作権は、フリーランスにとって作品を守る盾であり、収益を生む剣でもあります。
契約書にサインする前の数分間の確認が、その後の数年間の収益を左右することもあるのです。私自身の30万円の損失も、正しい知識があれば防げたものでした。
しかし、恐れる必要はありません。適切な知識を身につけることで、著作権は強力な味方になってくれます。クライアントとの信頼関係を保ちながら、自分の権利もしっかりと守る。そのバランスこそが、プロフェッショナルなフリーランスの証なのかもしれませんね。
一歩ずつ、確実に。あなたの創作活動がより豊かで安心できるものになることを、心から願っています。
私自身、いろいろな失敗した経験があったからこそ、今は慎重に、でも自信を持って実務を進められるようになりました。
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